辻占 #005270

#005270
会えぬと思うていた。このわたしを必要としてくれる者など、この世にいないのだと思うていた。ただ、独りでよいのだ。もしも、このわたしを必要としてくれるお方がこの世にいるのなら、そのお方のために、わたしは生きよう。それが、仏に仕えることじゃと思うていた。わたしはぶきっちょで、人よりもうまく何かをすることができない。しかし、こんなわたしでも、そなたのために生きることができるとは、なんとよろこばしい、なんと嬉しいことであろう。わたしは、そなたに救われたのだ。ありがたい、ありがたい……。
(「陰陽師 醍醐ノ巻 (文春文庫)」)