辻占 #006867

#006867
反応はあるが一貫した理屈はない。思考過程は自動的に進行し、その場しのぎを終えて拭い去られる。この男にはきっと、嘘をつくときにも自覚がないだろうという確信がわたしを捉える。素直に見える反応も、素朴に映る挙措振る舞いも、意識を経ずに湧いては消える。彼には嘘をつく必要がない。自分が語る内容は全て嘘だと知っている種類の人物だ。
(「屍者の帝国 (河出文庫)」)

屍者の帝国画像
屍者の帝国
(ISBN: 9784309413259)
¥858
在庫あり
河出書房新社
伊藤 計劃/円城 塔