辻占リスト #001513~#001522



#001513
人と人との関係は、多く思い込みで成り立っているのだろう。仮令嫌悪から口をついて出た言葉であっても、親切故の苦言と受け取れば角は立たない。
その逆もあるだろう。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)


#001514
理論武装した罵言程、始末の悪いものはないではないか。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)


#001515
私はそうした制度のようなものの中だけで生きていました。だから正直云って不満など持ちようもなかった。魚は水を意識しませんでしょう。そして水から揚げられて初めて水の存在を知る。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)


#001516
起こってしまった以上、それを起こり得ないことと呼ぶのは論理的に矛盾しているし、起こってはならぬことなどと呼んでしまっては、最早単なる恣意的な解釈に過ぎない。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)


#001517
信頼という言葉の裏には期待がありますでしょう。期待と云うのは無言の脅迫ですから。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)


#001518
まったく物好きに服着せたような人で。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)


#001519
笑わせないでくださいよ。自由がないとか云うんですか。そんなの娑婆だって同じでしょうに。何処だって檻の中みたいなものですよ。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)


#001520
面突き合わせておれば嫌なことばかり、一から十まで気に喰わねえ相手でも、居なくなればぽっかり穴が空くもんだ。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)


#001521
人に世の中は変えられないんだ。でもな、世の中違えて見るこたぁ出来るぞ。世間てぇのはな、己の外にあるものじゃあない。己の内にあるものよ。過去も未来も、知ってるのは自分だけだ。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)


#001522
自然は人も含めて自然なのです。人は地球の一部だ。それを恰も自分が神になったかのように覚え違って、滅ぶ獣は保護すべきだと嘯いたり、人が地球を護るのだと大法螺を吹いたりするのは如何なものか。本気で憂えるならば、まず己が滅びれば良いのに、それはしない。
(「文庫版 塗仏の宴―宴の始末」)