辻占リスト #000020~#000029

#000020
<家庭>とは人間がばらばらになってゆくプロセスにすぎない、と私は信じており、平気で口にもした。
(「怪物がめざめる夜」)


#000021
その病人は、今まさに死を迎えようとしていた。枕元には、神父が控えていた。病人が、何かを言おうとするように顔を動かした。神父はそっとそれを止めて、ペンと紙を渡した。
「酸素マスクを外すわけにはいかない。書きなさい。この紙は奥さんに必ず渡して置くから。」
病人は震える手で、何かを書き留めた。神父はその紙を、懐にしっかりと収めた。彼は、なおも何かを話したい様子だったが、ついに言葉を発することなく、天に召されたのだった。
病人の妻は、病室前の廊下で、夫の死を知らされた。神父は彼女の泣き止むのを待って、病人からの最後のメッセージを手渡した。そのメッセージには、次のように記されていた。
「酸素のホースを踏まないでくれ!」
(「Joke a day」)


#000022
ことばだけ美しくて、実行の伴わないのは、色あって香りのない花のようなものである。
(「仏のことば」)


#000023
「先生、酒と女と歌を断てば、長生きできるでしょうか?」
「駄目ですね。人生が長く思えるだけです。」
(「Microsoft Joke」)


#000024
もしも私の肉体が消滅したとしても、私の名前は残る。その名前をおぼえている限り、私の存在は不滅だ……そう考えてもいいのではないかな。
(「星は、昴」)


#000025
二十世紀の最後の数年は、わずか数秒のうちに過ぎた。人びとはただ、あれよあれよというだけであった。
1993 「あれよ」
1994 「あれよ」
1995 「あれよ」
1996 「あれよ」
1997 「あれよ」
1998 「あれよ」
1999 「あれよ」
2000 「あれよ」
2001 「あれよ」
二〇〇一年から先に、時間はなかった。そこでは時間が滝になって、どうどうと流れ落ちていたのである。
(作者傍白・そんなばかな)
(「急流」)


#000026
驚いたことに遠くから見ると
地球はちっとも疲れてるように見えない
まだ手おくれじゃないんじゃないか
今のうちに人類が滅びさえすれば
きっと地球は天命をまっとう出来る
(「遠くから見ると」)


#000027
「5時を過ぎたら、仕事のことはすっぱり忘れるようにしてたんですよ」
「結構なことじゃありませんか。なぜ、そのくらいでクビになったんですか?」
「勤務時間は6時までだったんです。」


#000028
越えてみるまで、誰も自分の限界はわからないものだ
(「親愛なるクローン」)


#000029
To be is to do ―ソクラテス
To do is to be ―ジャン=ポール・サルトル
Do be do be do ―フランク・シナトラ
(「デッドアイ・ディック」)