辻占リスト #002180~#002189



#002180
まれな才能を持っているからといって大成するとは限らない。自分に、他人に、期待に、抑圧に、規則に、使命感に、過去の華やかな勝利に、誤った練習に、一方的な精神主義に――みすみす潰されていった希有の才能を知っている。一つや二つではない。
(「バッテリー(3)」)


#002181
「あの人は、少しぐらい変わった方がいいんじゃないですか」
「おまえな、そういうこと言うな。全部、自分に返ってくるぞ」
(「バッテリー(3)」)


#002182
自分の頭で考え、自分の言葉をしゃべるやつは、やっかいだ。他人の言うことを鵜呑みにすることも、易々と従うこともしない。口下手で、鈍くさく、不器用なくせに、しぶとくて強い。そういう人間は、苦手だった。
(「バッテリー(4)」)


#002183
一番痛いとこを、こともなげについてきやがって……これだから、この手のアホは油断できねえんだ。
(「バッテリー(4)」)


#002184
自分の一番好きな世界に、どう努力しても、必死にがんばっても、かなわないやつがいる。とうてい登れない山が、そびえている。どうしたらいい?ひたすら仰ぎ見るか、目を背けるか、どっちかだろう。
(「バッテリー(4)」)


#002185
足場もない岩壁と高くそびえる山の頂を見てしまった。もしかしたら、この壁を登れるかもしれない。そう思ってしまった。思わせるやつに、ものに、十二歳で出会う事だって、ある。五歳で、二十歳で、六十で、死ぬ三日前に出会うことだってあるだろう。出会った者にしかわからない。早過ぎるとか、遅過ぎたとか、他人が笑えることじゃないんだ。
(「バッテリー(4)」)


#002186
自分に向かい合うことが一番、しんどい。向かい合わなくてすむのなら、自分の限界や弱さから、目を背けることができるのなら、幸せだと思う。
(「バッテリー(4)」)


#002187
あまり調子に乗るな。おまえらガキが幾らがんばっても、引っかぶれる責任なんて、たいしたことないんだ。
(「バッテリー(4)」)


#002188
出会った頃の熱情とは異質かもしれない。あんなに性急に求めるのではなく、もっと柔らかく穏やかな想いが、胸を浸している。この女を失いたくない、一日でも長く共に生きていたい。心底、願う。そう、まだ、こんなにも惚れている。
(「バッテリー(4)」)


#002189
なるほど、これは確かに可愛い。
生き続け、育ち続ける存在の何と眩しいことか。それは、夏に向け伸びてゆく木々の芽を見るようだ。やがてどんな花を咲かせるのか、心が騒ぐ。
(「バッテリー(4)」)