辻占リスト #003710~#003719



#003710
おまえはなかなか賢いが、気が短い。勝手に先を急いではならぬ。知識とは、歩んで身につけるものだ。走れば、取りこぼすものの方が多くなってしまう。
(「英雄の書(上) (新潮文庫)」)


#003711
「一人の子供が、己の意思で一人の子供の命を奪うことを憚らぬ世界は」
声も重々しく、厳しくなった。
「千人が千人の命を、万人が万人の命を奪うことを憚らぬ世界と、何ら変わりませぬ」
(「英雄の書(上) (新潮文庫)」)


#003712
嫉妬。怒り。罪悪感。取り返しのつかないことへの後悔。悲嘆。哀れみ。すべて、それ単体では害のないものだ。人が誰でも心に抱くものだ。むしろ、それをまったく抱くことのない心は、心として死んでいるとさえ言っていい。
が、ひとたびそこに邪悪が棲み着くと、すべてが変貌してしまう。邪悪は嫉妬に、怒りに、罪悪感に後悔に悲嘆に哀れみに、形を与える。それを表出するエネルギーを与える。
(「英雄の書(上) (新潮文庫)」)


#003713
口八丁になるのは、まず手八丁になってからにしてくれ。
(「英雄の書(下) (新潮文庫)」)


#003714
時として人は、ある方向に進むことには優れて熱心なのに、その方向を変えたり、逆戻りする必要が生じたときのことには、まったく備えがない、という間違いをおかします。
(「英雄の書(下) (新潮文庫)」)


#003715
これから何を見ても、何を聞いても――驚くなとは言わん。ただ、いたずらに歎くんじゃない。
(「英雄の書(下) (新潮文庫)」)


#003716
他人の言葉に、もっときちんと耳を傾けることを学ばねばいかん。今のおまえは、何も聞かない、考えない。ただ自分の感情に溺れて、勝手に右往左往しているだけだ。
(「英雄の書(下) (新潮文庫)」)


#003717
知は己が手でつかみとるものだ。さもなければ意味はない。
(「英雄の書(下) (新潮文庫)」)


#003718
語ったところで、信じてはもらえなかったでしょう。信じてもらえなければ、信じてもらえる時がくるまで、やはりあなたは沈黙しているしかなかったでしょう。
(「英雄の書(下) (新潮文庫)」)


#003719
名付けず、語らず、認めなければ、それは存在しないことになる。
(「英雄の書(下) (新潮文庫)」)