#004710
「それに、若者は、大人に比べると、自分に期待をしています」
「自分に期待ですか」
「自分はもっと良い人間であるはずだ。もっと強い人間であるはずだ。何でもできるはずだ。若者には、自分にそう期待する力と無邪気さ、権利があります。ただ、大人になればなるほど、期待は失望に変わります。自分がどういった人間であるのか、把握もできるわけです」
#004711
不信感は、その人が失敗するから生まれるわけではありません。失敗を認めないことから生まれるんです。
#004712
それこそが作り話の効力よ。物語は、時々、人を救うんだから。
#004713
まさか母親からそんな言葉を聞く日が来るとは思ってもみなかった。まことに人生とは奇怪で、予期せぬことで満ちている。
#004714
孔子も言ってるじゃない。『三十五歳になったら、巻き込まれなさい』って。
#004715
「俺の人生がこんなことになったのは、誰それのせいだ！とかね、そういうこと言うんだったらわたしもがっかりだけど」
「まあ、不満はないからね」
「それが一番だよ」
#004716
そもそも、慌てるな、と言われ、慌てることをやめられる人間などいるのだろうか。
#004717
気が弱いんだか丁寧なんだか分からないんだけど、まどろこしいんだよね。どうせまだ序盤だろ。最後まで喋るには、シーズン５くらいまで必要なんじゃないの。
#004718
「こういうときも冷静ですね」と感心した。「いえ、慌てていますよ。表現が下手なだけです」
#004719
「それでいいんですよ」と彼は言う。「いつまでも、くよくよしてればいいんですよ」