辻占リスト #005360~#005369



#005360
そんな幼稚な語彙の連なりから私は何を感じ取ったと云うのだ。頭が蕩けていたに違いない。思い出すだにうんざりする。
(「冥談 (角川文庫)」)


#005361
否、これは信じる信じないと云う類いの話ではないのだろう。信じられていると云うことを先ず驚くべきで、そしてその驚きを吾と我が身に重ね合わせ、驚きが驚きでなくなるまで突き詰めて、内省すべきなのだ。
(「冥談 (角川文庫)」)


#005362
お笑い種と切って捨ててしまえば、その先には何も実りはしない。
(「冥談 (角川文庫)」)


#005363
ない。ないないない。そんなものはない。
僕は頭を何度も振った。
幾ら子供だといったって、そんなモノを観ちゃいけないだろう。
いやいや、観ている訳がないよ。観たような気になっちゃいけないだろう。そんなモノ観ている訳はないだろうよ。観られないよこの世のものじゃないのだからさ。
(「冥談 (角川文庫)」)


#005364
虫喰いだなあこの頭。
(「冥談 (角川文庫)」)


#005365
私が悪くたって、それだってもうこっちが限界だって言ってるのよ。
そんなどろどろの女よ私は。皮一枚捲れば、もう腐りきってるのよ精神が。だからすっぱり止めてしまおうと思っているんだから。今日で終りにしたいの。
(「冥談 (角川文庫)」)


#005366
自分も街も齢を取りました。僕もあなたも老いたけれども、街だって同じだけ老いているんです。だからどっちが変わったということはない。何もかも、この世にあるありとあらゆるものは、一瞬たりとも同じ状態ではいられないんですから。
(「冥談 (角川文庫)」)


#005367
実話というのは、ほんとうのことじゃないんです。
ほんとうのことの話、なんです。
(「冥談 (角川文庫)」)


#005368
「想い出ねえ」
記憶は鮮明だ。でも。
(「幽談 (角川文庫)」)


#005369
何か希望めいたものを持っていたのだ。厭だったけれど、辛かったけれど、肚が立ったけれど、優しくされると忘れた。甘えられれば許した。謝られると哀れに感じた。でも、そうした平穏はすぐに崩れた。
(「幽談 (角川文庫)」)