#008390
信じたいものと信じられるものが交錯して――混乱しています。
#008391
言葉にする、行動にする、――表に出したときはもう動かない。四の五の言って翻意を促すことができるような相手ではなかった。
#008392
私は行きたいところに行く。それを他人に制限されるのは好きじゃない。
#008393
妬むほど欲したものを手にして、投げ捨てている意味が分かりません。
#008394
「あえて投げ捨てて踏み躙ることで憂さを晴らしているのかもしれない」
「憂さが晴れているようには見えませんでしたが」
#008395
何かを成し遂げたければ、その方向へ向かって一歩でも二歩でも進めばいいのだ。誰が先んじるか競う、というのは、そういうことだろう。だが、他の連中はそうではなかった。自分が前に出るのではなく、自分以外のものを退らせようとする。
#008396
――血が沸く、と言うのだろうか。ついに好敵手と相まみえた、という気がした。競う相手がいるのは良いものだ。
#008397
絶望したが、絶望した己を悟らせてはならないと思う程度の分別は残っていた。
#008398
だとして――改めて訊く。民が保身を考えてはいけないのか?
#008399
……私は己の手で掴めぬものはないように思っていた。何かを手に入れたいと欲するなら、それが手に入るまでやってみるだけのことだ。そうやってほしいものは余さず手に入れてきたから、どうやら天の心さえそれで掴めるのだと思っていたらしい。