#009200
こちらが正しいからと言って、相手を説得できるわけではない。正論を吐き、相手を言い負かしたとしても、その後の関係性は気まずくなる。気まずくなっても事態が改善されるならまだ納得できるが、状況は変わらない上に、単に相手と気まずくなっただけ、という展開も多い。
#009201
「いや、だって腹痛って仮病の時に使いたくなる理由だろ」
「全国の、本当に腹痛でつらい人たちに対して、謝ってほしい」
#009202
「どういうこと」
「特別じゃなくても幸せに生きることはできるから。むしろ、特別じゃないほうが幸せになれるんじゃないの？」
根拠もなく、曖昧に力説されても返答のしようがなかった。
#009203
「親になったら、お父さんたちの良かった部分は真似して、駄目だった部分はやめるんだぞ。そうすれば、ほら、だんだん完成形に近づいていくんじゃないか？」
そう簡単にはいかないだろう、と思いつつも、「うん分かった」と僕は答えた気がする。完成形が程遠いことだけは、分かった。
#009204
「しかしながら、信じていただけないかもしれませんが、私は閣下を尊敬しております」
「君が、私を？」
#009205
君の信念のためか、社会のためか、あるいは君のいう理想のためか、それはわからん。ただ私利私欲ではない、それだけは確かだな。だから厄介なんだ。
#009206
つまりこの男は自分と同じタイプの人間なのだ。にもかかわらず、目指す方向が違う。それが彼に苛立ちを感じさせるのだ。なぜここまで似ている自分たちが理解し合えないのかと。
#009207
「気のせいかな、なんかムカつく」
「気のせいです」
#009208
有能な部下に多くの自由裁量を与えること。報告を受け、責任は自分が被るが、部下には保護と許可を与え、成果を要求する。
原則は単純だ。しかし、実行は簡単ではない。
#009209
愚痴を聞くだけでも収穫はあるはずだ。