#003070
あんたの理屈は間違ってるけど、それでも俺には少し気持ちがいいんだ。
#003071
あたしはそんなに上等じゃない――誰かの目印になれるほどきれいじゃない。
#003072
うわーっ!待った待ったそっち方向につじつま合わせんなっ!
#003073
いい人だけど好きになれない、そういう人はいるものだ。
#003074
年寄りに敵わないのはこういうところだ。何も賢しく意図しない言葉でふと誰かを救ったりする。それはその年輪が言葉に力を与えているのだろうが。これは若い者にはおいそれと真似できない。
#003075
あの男は分かったようなふりが得意なんだ。
#003076
けれど、いつ帰れるのかを思うと気持ちが重たくなるのは否めなかった。
#003077
しかしそれはすぐさま渇望へと変わった。それを受け入れることを葛藤するがゆえにである。すぐさま応じるのなら渇望などは生じない。
#003078
俺も分からないんだ。今、分からなくなったんだ。ちょっと待って。
#003079
「――お前がいてくれてよかったよ」
「俺もだよ、とか一応言っとく?」
「気持ち悪いから遠慮する」