#010600
「危なくない?」
「まあ、危険でしょうね」ため息をつく。「でも、それにも慣れてしまったようです」
#010601
「わたしはどうやら悪い魔術師のようですね」
「悪くったって、あたしたちの魔術師よ」
#010602
「だから、やっつけられたりしちゃ駄目なんだからね」
「できるかぎりがんばります」
#010603
「ひどく動転していた。とてもじゃないが無視できなかった」
「ああ」心が温まった。
心配ではあったが、それでも心が温まった。
#010604
神々は正しい魂と正しくない魂を、それこそひとりひとり見わけることができるんだろうが、軍はみんなまとめて扱うことになるからな。
#010605
導きを求めて祈禱を捧げようかとも思ったが、これまで一度としてそうした祈りに返事をもらえたためしはない。つまりは自分で判断しろということだ。
#010606
ほんとうに聞きたいのはそこではない。だが、〈あなたがたふたりはどうやって、死によっても断ち切られることのない絆を築くことができたのですか〉という問いは、一時間前に知りあったばかりの相手にむけるには、あまりにも立ち入りすぎている。
#010607
ですが彼女は、美しく生まれついた人間にとって祝福とも呪いともなり得る労せずして手に入れた贈り物ではなく、何よりも、几帳面さと健康によって人を魅了していたんです。
#010608
もしかしたら〝聖者〟、だったのだろうか。真の意味での聖者。魚のようにひそやかに世の中を泳ぎまわり、派手な見かけや力といった外側にしか関心をもたない世俗の目にはけっして気づかれることのない、ただ優しいだけの、小さな町に住む小さな女。ひとりひとりの魂に目をむけて。
#010609
わたしはほかの女では満足できなくなってしまいました。じつのところ、どんな人間でも駄目でしょう。わたしの人生はもう……とてもつまらないものになってしまったようです。