#010800
「それだけだ。だが、責任を逃れられるとは考えない」
「そのときどのようなお気持ちでしたか」
「子供の野球ではじめてヒットを打ったときのような気分だったな。まったく実に爽快で楽しかった」
#010801
みずから名を汚すかもしれんが、いまさら名を残したり善人面したりする気はない。
#010802
この闇は、わたしには明るすぎる。
#010803
「また、映画のセリフみたい」
「映画のセリフがぜんぶうそっぱちだとはかぎらないよ」
(「思い出のヴァギナ」)
#010804
ある男がある女と恋に落ちるのはどうしてなのかがわからないのとおなじぐらいに、ある夫婦が離婚にいたる原因もわからないものなのではないだろうか。
(「むかし聴いた曲」)
#010805
結婚というのは人生の重大事だが、重大事のわりには存外ささいなことで決まりもする。
(「むかし聴いた曲」)
#010806
たくさんの虚構の物語の向こうに、ほんものらしいものの映像がぼんやりと見えて、そのほんものらしいものをなんとはなしに実在するかのように信じて暮らしてきた。それだけのことでいいんじゃないのか。
(「祖父の物語」)
#010807
解き方のお手本があって、答えの出ることがわかってさえいれば、わたしはだれより速く上手に解ける。だから優等生だった。末は博士か大臣かなんて言われたもんですよ。だけど、社会へ出ると通用しないんだね、この優等生は。
(「隣人」)
#010808
才は花開くことを誓わぬ蕾。春が来れば全ての者どもに与えられるものではありませぬ。
#010809
貴女はとても幸福なのに、それに背を向けようと努めていらっしゃる。