#011330
さよなら。
わたしたち
とても短い恋をしたの。
(「いけちゃんとぼく 」)
#011331
幸福になるべくしてこの世に生まれ、幸福になるべく育てられたような女性が、幸福に無縁な男にそれほどまでに強く心を縛りつけられているというのは、痛ましくも気の毒なことだった。
#011332
もう心が擦り切れている。
#011333
人なんて、ろくな生きものじゃない。
#011334
胸の奥に灯った考え事の芽を、少しの間でいいから大事に眺め回してみたい。それには、ちょっと外に出るのがいちばんだ。
#011335
手下というよりは仲間と集まって、一つ非道なことをすれば一つ悪の階段をのぼり、二つ非道なことをすれば悪の花が開く。
ーー当人にとっては、最高に心地よい生き様だったろう。
#011336
人は皆、先達が成し遂げてきた事物を学び、それに憧れ、それをさらに熟達させ推し進める努力を重ねることで、世の中をよくしてきた。しかし、同じ理屈は悪事の方にもあてはまる。なぜなら、どちらも人の心の力が起こすことだからだ。
#011337
若いころには、ずいぶんと惨めな想いをいたしました。からかわれるのも辛いけれど、妙に優しく慰められるのも嫌でしたわ。
#011338
気になるーーけれど。
二人がさしで話しているのは、その必要があるからだ。今はその邪魔をしてはいけない。
#011339
美丈夫で、気が利いて頭が回り、人をそらさず弁舌も立つ。でも、そういう文句なしの人物であるからこそ、老若男女を問わず、自分の心が「これ」と認めた道の上にいる相手でないと、無造作にあしらってしまう場合がある。