#011320
当時のわたしは、一日じゅう、昼日中であっても闇の中にうずくまっているような気分でございました。
#011321
早く死んで楽になりたい。いや、自分はもう死んでいて、地獄に落ちているのか。だからこんなに苦しいのか。そう思うと泣けてきて、焼けるような涙が流れる。喉は渇いてからからで、声も出ない。息をするだけで胸が張り裂けそうになり、身体のあちこちからずっと血が流れ出ている感じがする。
#011322
一人前の女になるなんて、ちっとも良いことじゃない。子供のままでよかった。小娘のままでよかった。
#011323
あれは人生のなかの貴重な一幕。幸せに満たされていたからこそ、長く続くものではない。
#011324
このまま自分は死ぬのだろう。それでいい。こんなに辛い暮らしに未練はない。さっさとあの世にいってしまいたい。
#011325
あれはただの幻だったのではないか。遠くに見える虹みたいなもの。めったにない幸運に恵まれた女だけが、ああいう幸せを得ることができる。
#011326
また会えたのは嬉しいけれど、どうして来てしまったの?今は幸せではないの?人の世で、命がけであたいと会いたいと思うほどに、辛い目に遭っているの?
#011327
これは悲しみの涙ではない。憤怒の証だ。
#011328
幸福になるべくしてこの世に生まれ、幸福になるべく育てられたような女性が、幸福に無縁な男にそれほどまでに強く心を縛りつけられているというのは、痛ましくも気の毒なことだった。
#011329
ぼくが生死をさまよったのに、世界は何ひとつ、かわってない。
ええと神様はどこだ。
(「いけちゃんとぼく 」)