辻占リスト #004480~#004489



#004480
十四歳。
短い。それは、もう、間違いなく。
だが、おまえはすでに疲れていた。年老いていた。
(「疾走 上 (角川文庫)」)


#004481
ぜつぼうはかこのひさんなたいけんがうむのではなく、みらいになにもたくせないことなのだ。
(「疾走 上 (角川文庫)」)


#004482
「おい」とがった声が背中に刺さる。「まだ話は終わってないぞ」
そんなもの、始まってたのか?
(「疾走 上 (角川文庫)」)


#004483
自分自身を人質にして生きていけば、怖いものなんてなにもないじゃないか。
(「疾走 上 (角川文庫)」)


#004484
おまえの知らない街は、おまえを知らない。
(「疾走 下 (角川文庫)」)


#004485
ものを見るときに目が焦点を合わせるように、ひとの言葉を聞くときには、無意識のうちに耳の焦点を合わせている。焦点をずらし、ゆるめれば、言葉は意味を失った声になり、やがて息づかいの消えた音になる。
(「疾走 下 (角川文庫)」)


#004486
酒に酔うというのは、すべてのものの輪郭がぼやけていくことなのかもしれない。と思ったことも、へらへらと笑う端から、あれ、いまなに考えてたんだっけ、と忘れてしまう。
(「疾走 下 (角川文庫)」)


#004487
子どもはなあ、親を捨てることはできんのん。親も子どもを捨てることはできんのん。ほんまやで。たとえ一緒の家に住んどらんでも、恨みごとしか出てこんでも、やっぱり親子は親子やねん。どないしょうもないほど、親子やねん。
(「疾走 下 (角川文庫)」)


#004488
「酒、飲めるんだろ、ほんとは」
「……飲めないです」
「飲んだことないのか」
「……はい」
「じゃあ、飲めるか飲めないかわからないだろ」
(「疾走 下 (角川文庫)」)


#004489
幸せになるためにひとは生まれ、生きていくというのなら――その「幸せ」の形を見せてくれ。ここを目指せばいいんだ、と教えてくれ。これをつかめばいいんだ、と教えてくれ。
(「疾走 下 (角川文庫)」)