#009560
顔を見れば、ひと言も信じていないのがわかる。ちがう、そうではない──信じるよりも信じないほうが恐ろしくないのだ。
#009561
どこに行っても幸せになれない。
#009562
ああ、そうそう、そうだった。あの若い愚か者たちね。年寄りの愚か者のほうがもっと質が悪いけれど。
#009563
〝あなたはいまのそのままで完璧です〟という言葉、いまは心の奥にしまっておいて、あとでゆっくり考えよう。怖い大人にとりあげられることを恐れ、お菓子を隠しておく子供のように。
#009564
わたしはいままで、あまりにも長いあいだ大人でいなくてはならなかったのよ。
#009565
わたしはわたしの道にやってきた運命にそのときどきで対処するだけよ。
#009566
安全な暮らしは裕福とか貧乏とかとは関係ないわ。善良だとか邪悪だとかとも。人は好きなだけ信心深くなれるし、宮殿をもつことだってできる。でも大地がその肩を揺らしたり火事が起こったりしたら、すべて一瞬で失われてしまうんだわ。
#009567
真の安全は根をはっているんじゃなくて、足をもって移動するものなのかもしれないわね。もしくは、翼を生やして。
#009568
もし選択できるなら、わたしは何を望むだろう。
#009569
この歳になったら、どこへ行っても新顔なんてことはあり得んさ。