辻占 #010461

#010461
わからなかった。いつも自分に向ける、あの柔和な微笑みの裏で、ひどく悲しんでいるだろうと想像するだけだ。
その悲しみが、どれほど深いものであるか、推し量ることもできない。
果たしてこの自分が、癒やし、慰めることが可能な悲しみであるのかも。
この自分が彼にしてあげられることが、なんなのかも。
それらがわかれば、と願わずにはいられなかった。
(「月と日の后」)

月と日の后画像
月と日の后
(ISBN: 9784569850092)
¥2,090
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冲方 丁