#008820
素面って不思議だ……
#008821
二十七歳という年齢は微妙な歳だ。オッサンと言ってしまうにはまだ少し若く、若いと言いきってしまうには少しばかり人生の辛みを知っている。
#008822
余り積極的な付き合いはなかったが、意識下では、二人は互いを嫌い合っていたのかも知れない。
#008823
これまでずっと孤独だったし、これからも孤独だろう。だから、そのことにことさら不自由を感じることはなかった。
#008824
毎日毎日が変わり映えのしない退屈な仕事だとグチを漏らす者もいるが、退屈な仕事こそがこの世で最も素晴らしいと彼は常日頃から思っていた。
#008825
今日の朝一番にかかってきた電話も、色々な部署を転々とたらい回しになった挙げ句に、彼のところに回って来た奇妙な電話だった。
こういうのにはロクなものはない。
#008826
悪夢とは、こんな形をしているのかも知れない。
#008827
「何のために戦うのか、何のために命を懸けるのかは、自分の胸に聞け、分からなければ、自分で探すことだ」
「ふん、スカしたこと言うじゃないか」
#008828
これが前例っス。
#008829
だが、実力に差があるからと言って、負けるのを前提に戦うわけにはいかない。