辻占リスト #008810~#008819



#008810
話してくれれば、と、何度も思いました。話すことのできぬ、形にならぬ鬱屈というものがあることを、心が幼かった私は、まだ、知らなかったのです。
(「明日は、いずこの空の下」)


#008811
自分の身の丈に合っていない背伸びをしていることは、自分ではなかなか見えないものです。
(「明日は、いずこの空の下」)


#008812
でも、他者の弱さに気づくことができる人は、ごく自然に、他者を温かく包むことができる。
(「明日は、いずこの空の下」)


#008813
望むと望まざるとに拘わらず、日々の暮らしは、その細々こまごまとしたすべてを私たちの身体の隅々に沁み込ませていて、遠い異国にいても、小さな欠片ひとつで、故郷の記憶を蘇らせるのです。
(「明日は、いずこの空の下」)


#008814
どうしても、あの味でなければ、と思っているときには、違いばかりが気になるのに、ま、違って当然、少しでも似ていれば上等さ、と思いながら作ったときには、身も心も温まる懐かしい味に思える。
(「明日は、いずこの空の下」)


#008815
フロンティアは「辺境」でも「衝突の場」でもなく、「出会いの場」であってほしい。そこに道を浮かび上がらせるものは、剣ではなく灯火であってほしい。
(「明日は、いずこの空の下」)


#008816
寒風に吹きさらされている夢から覚めると、寒風に吹きさらされていた。
これでは夢としての機能を果たしていない。
(「失踪日記」)


#008817
ひとりでできるからラクかなと思ったら、ラクじゃない。内にこもっちゃうから、だんだん追い詰められていく。
(「失踪日記」)


#008818
もう一生飲めないなんて何を楽しみに生きてけばいいんだ?
(「失踪日記2 アル中病棟」)


#008819
素面って不思議だ……
(「失踪日記2 アル中病棟」)