#009620
おれは相変わらず、彼女が既に答えを知っている質問には返事をしないというやり方を続けた。
#009621
「おれの友だちから拝借した言い回しだ」
「噓でしょう」
「なにがだ、言い回しのことか、それともおれに友だちがいるってことか?」
#009622
「慣れることだな」おれはこわばった口調でいった。「おれたちは悪役で、勝つことはまずない」
#009623
「それはあまりに……わびしいな」
「そうじゃないといった覚えはないぞ」
#009624
自分の胸に尋ねてみるんだ。これがほんとうの自分の姿なのか? 自分の胸に尋ねて、その答えに驚くな。けっして見るのをやめるんじゃない。
#009625
だが欲望だけではふたりを結びつけておくには不充分だった。
#009626
おれはたとえそうするのがいちばんなときでも、口を閉じていることができなかった。
#009627
だからおれたちは別れた。憎みあっていたわけではなく、ふたりの恋愛はいけるところまでいったので、たぶんもう会わないほうがいいだろうという認識で一致しただけだ。
#009628
終わったと思っていたし、二度と会うことはないだろうとも思っていた。だがなかには、簡単には破れない呪文をかける女性がいるものだ。
#009629
音楽は必要不可欠だと思うものだっているんだよ!